熊谷染めができるまで
Ⅰ 捺染のり(なぞの物質+染料・熱湯=捺染のり)
なぞの物質の正体は糖粉・米ぬか・塩・熱湯がミックスされた「糊」です。これに染料と熱湯を配合し粘度を調整して、捺染糊の完成です。濃い色や薄い色で立体感を出すことで、日本古来の美意識であるわびさびを表現するんです。
Ⅱ 型紙
染める上で必要な型紙、幾何学模様や細かい縞模様などとても「人間業」とは思えません。まるで、コンピューターグラフィックのよう。細かく、正確に彫られているけれど、手彫りという事で、手作りの温もりが感じられます。
Ⅲ 印捺(いんなつ)
いよいよ生地に染める作業であるを行います。型紙を枠にはめ、型を用いて模様を出す部分に、捺染のりを一定の厚さに置く操作を印捺といいます。この時、布に模様を鮮明に写しだし、他の部分に捺染のりを付着させないことが大切です。
Ⅳ 蒸熱処理
地糊が乾いたら、生地がくっつかないようおが屑をかけ、蒸し棒にうどんを干すような状態につるします。24反までかけることができます。そして、染料を固定するための「蒸熱処理」をし、約100℃で40分間蒸します。蒸し機 この窯は元はキノコを殺菌する機械でした。ムラができないようにするには、長年の勘を頼りに釜の中でどう変化しているかを見極めることが大切なんです。
Ⅴ 水洗い
蒸し終わると余分な色糊等を除去するために水や洗剤を用いて洗浄します。友禅流しを工場内で行うといったイメージで、水は地下水をくみ上げているんです。水道水は、消毒用の塩素などが入っているので、適さないそうです。
Ⅵ 乾燥
広い場所で、うどんのように一反ずつ伸ばしながら干していきます。
Ⅶ 完成
最後にしわを伸ばし、幅を揃え「反物」が出来上がります。江戸時代には、藍染めや草木染め(紅花)などの天然染料で染められていたのですが、到底庶民には手が出せないものでした。しかし、明治の開国で化学染料が日本に入ってきてから、染物文化は庶民にも定着してきたのです。